移動平均線とは、過去の一定期間の価格を平均化してつなぎ合わせた線で、チャートに重ねて表示されます。FXや株取引において、トレンドの把握とエントリータイミングに役立つテクニカル指標です。
移動平均線が上向き下向きでトレンドの方向性を判断し、期間が異なる複数の移動平均線が交差するタイミングで売買の判断をすることもできます。
他のテクニカル指標と組み合わせて使用することで、よりトレードの精度を高められます。
この記事では、MT4やMT5で移動平均線の表示方法と具体的な移動平均線の使い方を解説しています。
MT4/MT5で移動平均線を表示する手順
MT4、MT5、どちらでも移動平均線の表示手順は同じです。
パソコン対応MT4/MT5で移動平均線を表示する手順
パソコン対応MT4の画面左側ナビゲーター枠から「インディケータ → トレンド → Moving Average」の順に選択します。(MT5の場合は、「指標 → トレンド系 → MovingAverage」の順で選択します。)
適用させたいチャートにMoving Averageをドラッグ・アンド・ドロップ(左クリックを押しながら移動して左クリックを離す操作)をします。
移動平均線の設定画面が表示されるので、「期間」「移動平均線の種別」「スタイル」の3箇所をご希望のものに変更して「OK」ボタンを押します。
「表示選択」タブでは、どの時間に表示させるかを指定することもできます。(デフォルトでは、全ての時間で表示です。)
スマートフォン対応MT4/MT5で移動平均線を表示する手順
チャート画面上に表示されている「ƒ」アイコンをタッチします。
インジケーター画面の「メインウィンドウ」をタッチします。
インディケータ追加画面のトレンドからMoving Averageを選択します。
「期間」「メソッド」「スタイル」をご希望のものに設定して「完了」をタッチします。
- 期間: 5、10、20、75、200 等が一般的に使用されます。
- メソッド: 「Simple(単純移動平均線)」、「Exponential(指数移動平均線)」が主に使用されます。
- スタイル: 各期間で色と線の種類を分けた方が見やすくなります。
移動平均線の設定値
移動平均線の種別(メソッド)
移動平均線の種類は、4種類があります。一般的に利用されているのは、単純移動平均線(SMA)と指数移動平均線(EMA)の2種類です。
同じ移動平均線でも上記画像のように、移動平均線の位置が異なります。どの種類の移動平均線が現在のチャートに合うかを試してから利用することが大切です。
- 単純移動平均線(SMA):MT4の表記は「Simple」
- 指数移動平均線(EMA):MT4の表記は「Exponential」
- 平滑移動平均線(SMMA):MT4の表記は「Smoothed」
- 加重移動平均線(WMA):MT4の表記は「LinearWeighted」
各移動平均線の特徴(メリットとデメリット)
MAの種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
SMA | 長期的なトレンドの方向性が分かりやすい | 直近の値動きによる平均線の反応が遅い |
EMA | 単純移動平均線よりも直近の値動きに早く反応 | 大きな為替変動や横ばいの相場の時は、ダマシが多い |
SMMA | SMAよりも長期的なトレンドの方向性が分かりやすい | 直近の値動きによる平均線の反応が遅い |
WMA | 直近の値動きを重視し、最も反応が早い | 平均線の中でも一番ダマシが多い |
移動平均線の期間
移動平均線の期間(数値)は、ローソク足の本数を意味しています。「移動平均線の期間 = ローソク足の本数」で計算されるので、チャートの時間足により期間が異なります。
例えば、チャート時間足が日足で移動平均線の期間20だった場合は、過去20日間の移動平均線となります。チャート時間足が1時間だった場合は、過去20時間の移動平均線です。
移動平均線は一本だけではなく、短期・中期・長期の3本を同時に表示させることが一般的です。
それぞれ、通貨ペアや表示時間足、そのときの相場によって適切な期間は異なります。どの期間が現在のチャートに合うかを調整してから取引に利用することが推奨されます。
短期移動平均線 | 5、7、10、14など |
中期移動平均線 | 20、22。25、50、75など |
長期移動平均線 | 100、150、200など |
移動平均線の使い方
移動平均線は、「短期・中期・長期」の3種類の移動平均線を表示させ、移動平均線の向きや交差、価格の接触で売買の判断材料にします。
- 移動平均線の向きで相場のトレンドを判断
- 移動平均線の交差で相場の転換を判断
- 価格が移動平均線で反発・反落するか抜けるかで売買を判断
- グランビルの法則で売買を判断
移動平均線の向きで相場のトレンドを判断する
- 上昇トレンド: 移動平均線が上向き
- 下降トレンド: 移動平均線が下向き
短期・中期・長期の移動平均線がすべて同じ向きになると、パーフェクトオーダーと言われ、トレンドが強いシグナルです。価格が短期の移動平均線に接触するタイミングで順張りトレードによる取引戦略がたてられます。
移動平均線の交差で相場の転換を判断する
- 上昇転換のシグナル: 短期移動平均線が中長期移動平均線を上へ抜けた地点(ゴールデンクロス)
- 下降転換のシグナル: 短期移動平均線が中長期移動平均線を下へ抜けた地点(デットクロス)
ゴールデンクロスで買い、デットクロスで売り。短期移動平均線が逆向きに転換したときに利益確定や損切りの取引戦略ができます。
抵抗線と支持線で売買のタイミングを判断する
- 買いシグナル: 現在価格が移動平均線を上抜け・反発したとき
- 売りシグナル: 現在価格が移動平均線を下抜け・反落したとき
移動平均線は、抵抗線や支持線としても機能します。
価格が下落中に価格の上に位置する移動平均線に反落して価格が下落した場合は、反落のタイミングで売り注文の取引ができます。価格が移動平均線で反落せず、移動平均線を上抜けた場合は、買い注文の取引ができます。
価格が上昇中に価格の下に位置する移動平均線に反発して価格が上昇した場合は、反発のタイミングで買い注文の取引ができます。価格が移動平均線で反発せず、移動平均線を下抜けた場合は、売り注文の取引ができます。
グランビルの法則で売買を判断する
グランビルの法則は、1960年代にアメリカの投資家であるジョセフ・グランビルによって提唱されました。
グランビルの法則とは、価格の動きやトレンドの変化に注目し、それを根拠に取引の意思決定を行う原則です。「価格はすべてを反映し、過去の価格パターンは未来の価格パターンにも影響を与える」という考え方に基づいています。
基本的には、下記のパターンで売買を判断します。
買いシグナル
- A: 移動平均線が上昇に転じ、価格が移動平均線を下から上へ突き抜ける
- B: 価格が移動平均線を下回っても、移動平均線が上昇している
- C: 上昇中の移動平均線に近づいてきても、移動平均線を下回ることなく再び上昇
- D: 下向きの移動平均線から価格が大きくかけ離れて下落(乖離率が高い)
売りのシグナル
- E: 移動平均線が下落に転じ、価格が移動平均線を上から下へ突き抜ける
- F: 価格が移動平均線を上回っても、移動平均線が下降している
- G: 下降中の移動平均線に近づいてきても、移動平均線を上回ることなく再び下落
- H: 上向きの移動平均線から価格が大きくかけ離れて上昇(乖離率が高い)
移動平均線の弱点
移動平均線の最大の弱点は、「だまし」が発生することです。「だまし」とは、売買シグナルがでても反対の動きをすることです。
例えば、上記のチャート画像例のように、上昇トレンドで移動平均線が支持線となり反発を繰り返していたものの、価格が移動平均線を下へ抜けて下落すると思わせるような値動きをします。
だましが発生する主な理由は、「そもそも他の指標で価格が動いていた」「大口の投資家やヘッジファンドが一般投資家のストップロスを狙った」の2つの理由があります。
移動平均線のだましの対策方法
移動平均線のデメリットである「だまし」を対策するには、主に以下の2点です。
- 短期・中期・長期の複数の移動平均線を表示する
- 他のインジケーターを追加表示する
複数の移動平均線と他のインジケーターを追加表示した例
上記のチャート例は、「20SMA、75SMA、150SMA」「MACD」を表示したものです。
赤枠の箇所で価格が75SMAを下へ抜けていますが、150SMAは上向き継続と反発をしています。MACDもプラス数値のままです。このことから、価格が75SMAを下へ抜けても上昇トレンドは継続しているのが判断できます。
チャート表示時間足や通貨ペアによっても適切なインジケーターや設定値は異なるので、その都度調整した方がだましを回避できます。
移動平均線(Moving Average)の使い方のまとめ
- 表示方法は、PC対応MT4/MT5の場合、適用させたいチャートにMoving Averageをドロップ
- スマホ対応MT4/MT5で表示するには、「ƒ」→メインウィンドウ→Moving Averageの順にタッチ
- 移動平均線の種類は、SMAかEMAが一般的に使われる
- 期間は、短期・中期・長期の3種類を表示
- 期間の数値は、その都度その相場にあった数値を調整する
- 移動平均線の向きでトレンドを判断
- 複数の移動平均線の交差で売買シグナル
- 抵抗線や支持線として反発・反落で売買を判断
- だましを回避するには、複数の移動平均線とインジケーターを表示すること